ジロ・デ・イタリア2018の3週間にわたる激戦が幕を閉じた。

最後まで予想を裏切る展開の連続で、「世界最高のレース」の名に恥じない3週間であった。

3週目レビューとなる今回は、1名だけを選びたい。

それは、劇的な逆転総合優勝を果たしたクリス・フルーム…ではなく、彼に「敗北」し、総合2位となった昨年総合優勝者トム・デュムランその人である。

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最強「チーム・スカイ」

ジロ3週目、いや、今大会全体を通して、最も注目するべき日となったのが、第19ステージ「フィネストーレ」決戦だ。

第19ステージコースプロフィール

第19ステージコースプロフィール 引用:ジロ・デ・イタリア公式ウェブサイト

今大会最高標高地点(チマ・コッピ)となる標高2178mまで一気に駆け上がる18kmの山登り。

その行程の後半は未舗装路となっており、あらゆる困難が選手たちを襲う地獄のようなステージだ。(詳しくは下記参照)

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大会前から、この日、最後の大きな動きが起こるだろうこと、そして、その動きを起こすのがチーム・スカイであることも、十分に予想されていたことであった。

そして実際に、スカイは動いた。

予想はしていたものの、ライバルたちは手も足も出なかった。

それだけチーム・スカイの強さは群を抜いており、エースであるクリス・フルームの強さは圧倒的だった。

【第19ステージハイライト チーム・スカイの牽引 0:28〜】

フィネストーレの登りが始まると共に、チーム・スカイは隊列(トレイン)を作って集団を完全にコントロールし始めた。サルヴァトーレ・プッチョが牽引するこのトレインのペースアップについていけず、マリア・ローザを着るサイモン・イェーツが早々に陥落してしまう。

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これを見たスカイはさらなるペースアップを図る。プッチョに代わり、今年新加入のダビ・デラクルスが先頭に出て加速。

そして、未舗装路に突入したと同時に、最後の牽引役としてケニー・エリッソンドが前に出た。

上体を前後左右に激しく振り回し、ここが彼にとってのゴールであるかのような勢いで猛烈な加速を開始するエリッソンド。

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これに、総合3位のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(バーレーン・メリダ)がついていけずに脱落。

そして、総合2位デュムランも、ついていくのがやっと、という状態であった。しかもこのとき、チーム・サンウェブの最も信頼できるアシスト、サム・オーメンもまた、千切れていなくなってしまった。

サム・オーメンはオランダの新聞”De Telegraaf”の5/25付の記事で以下のようにのコメントしている。

スカイのコントロール力とパワーに少しショックを受けた。

突然すべてが崩壊し、大きな混乱が巻き起こった。(中略)何をすればよかったのか、どうすればトムを助けることができたのか、今でもまだわからない。

De Telegraaf 記事原文はこちら

デュムランの誤算

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