今年最初のグランツール、ジロ・デ・イタリアが開幕してから早く10日。すでに、数多くのドラマがあり、サプライズがあった。

今回は開幕から1週間で、注目すべき活躍をした選手たちをピックアップし、その場面を振り返りながら「ジロ」1週目をレビューしていきたいと思う。

「最強スプリンター」の執念

今大会の第2・第3ステージは、コース全体が平坦基調で「集団スプリント」による決着が予想されていたステージであった。

この2つのステージを共に制し、今大会最強のスプリンターであることを証明してみせたのが、クイックステップ・フロアーズのエーススプリンター、エリア・ヴィヴィアーニである。

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ヴィヴィアーニは今シーズン、ワールドツアーチームに所属するスプリンターの中で最も多い勝利数を記録している選手である。彼が所属するクイックステップ・フロアーズも、今シーズン驚異的な勝利数を稼いでいる文句なしの「最強チーム」であった。

さらに言えば昨年のジロ・デ・イタリアでも、このクイックステップ・フロアーズのエーススプリンターであったフェルナンド・ガヴィリアが、怒涛の4勝と最強スプリンターの証「マリア・チクラミーノ」を獲得している。

「最強」とは何か、を見せつける

そんな「最強チーム」の「最強スプリンター」だからこそ、ヴィヴィアーニはこのジロを、これまでにないプレッシャーを感じながら挑むこととなった。

第2ステージで幸先の良い勝利を遂げたヴィヴィアーニ。しかし、第3ステージは彼にとって、いくつもの困難が待ち受けるステージとなった。

まず、彼の最も信頼する最強「発射台」ファビオ・サバティーニが、パンクによって離脱。

さらに、集団先頭を陣取ってくれていたチームメートたちと、自分との間に他のライバルチームの選手たちが割り込む形となり、スプリントにおける理想の形を取れていなかった。

そんな状況下、ラスト300mで飛び出す、最大のライバルのサム・ベネット(ボーラ・ハンスグローエ)。ヴィヴィアーニもすぐにこれに反応し、ベネットの背後につくことに成功するが、ベネットはそのまま進路を右に。

第3ステージ:ハイライト 2:00〜

ほぼコースの端にまで到達するようなこの「寄せ」によって、ヴィヴィアーニは最終スプリントを行う隙間を失ったかのように思えた。

しかしここで、ヴィヴィアーニは、寄せてきたベネットを左肩で「押し返した」。
たまらず離れたベネット。ここでヴィヴィアーニはもう一度踏みなおし、時速65km弱まで加速した最強スプリンターは、そのまま誰も寄せ付けない勢いでゴールに飛び込んだ。

エリア・ヴィヴィアーニ

端に追いやられてからスプリントするヴィヴィアーニ(写真左端) 引用:Giro d’Italia公式ウェブサイト

最強の最強たるゆえんは、覆すのが不可能と思えるような状況を、その実力でもって跳ね返してしまえるところである。その意味で、このときのヴィヴィアーニは文句なしで最強であった。

さらなる困難へヴィヴィアーニはいかに立ち向かうか

しかし逆に言えばこれで、他の全てのライバルたちに完全にマークされたことを意味する。第7ステージでは、この第3ステージとは逆に後ろに貼り付かれたベネットに敗れ、リベンジを果たされている。

第7ステージ:ハイライト

最終日ローマまでに残されたスプリントステージは3~4つ。昨年のガヴィリアを超える成績を出せるかどうか。ヴィヴィアーニにとってのジロ・デ・イタリアは、まだ始まったばかりである。

進化する若き天才クライマー

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