トム・デュムラン最後の闘い
失意の一日を終え、デュムランは最後の闘いに乗り出す。
第20ステージ。グランツールは21日目まであるが、多くの場合、最終日は総合順位が変わることはほとんどない。
よって、マリア・ローザを巡る戦いは第20ステージがラストだが、難関山岳が連続するコースだ。
デュムランをはじめとする強豪たちは、第15ステージのように、フルームが突然体力を失い、崩れてくれるのを望んでいたかもしれない。
しかし、「最強チーム」スカイのトレインに護られた「王者」は全く揺らぐことなく、メイン集団は最後の山、チェルビニアに向かう。
デュムランの武器は一定ペースでの淡々とした走りであり、ゆえに防御には適しているが、攻撃には向いていない。
それでも、残り9km。
40秒のタイム差をひっくり返してマリア・ローザを奪い返すために、デュムランは行かざるをえなかった。
デュムランの捨て身のアタック
デュムランの1度目のアタックは、簡単にフルームに追い付かれてしまう。
少し間を置いて繰り出したアタックも、全く歯が立たず。
間髪入れずに3度目のアタック。だがこれも、あっという間に追いつかれたうえに、カウンターでフルームのアタックを許してしまった。
なんとかこれに追い付き、4度目のアタック。
【第20ステージハイライト デュムランのアタック 0:45〜】
こんなデュムランの姿は、今まで見たことがなかった。
このアタックの連続で体力を失い、下手をすれば現在の総合2位という立ち位置を失う可能性も大きい、捨て身の攻撃。
トンネルの中で繰り出した5度目のアタック。
これもすぐに捕まえられ、再度のカウンターアタックを前にして、デュムランはついていくことができなかった。
首を横に振ったデュムラン。
この瞬間、彼の挑戦は終わりを告げた。
大会前から予想され、期待されていた、フルームとデュムランの最初の真剣勝負は、今回、フルームに軍配が上がった。
僕は最強ではなかった。
デュムランは再びフルームに挑戦するだろう。
彼は今大会、初日に総合首位になったのち、第2ステージ以来は常に「総合2位」を守り続けていた。
ジロ・デ・イタリア2018、2番目に強かったのがこの男であることは、真に正しい。
Cyclingnewsの記事で、デュムランはこのように語っている。
後悔はしていない。
フルームを倒すためにできることは何もなかった。僕はチームと自分自身を強く誇りに思う。
とても疲れていた。空っぽだった。
でも、挑戦しなければ僕は自分を許すことができなかっただろう。
僕は今日、持てる全てを出し切った。僕は自分のことをとても誇りに思うよ。
僕は最高峰のクライマーの1人だった。でも最強ではなかった。
フルームの方が強かった。
(Cyclingnews 5/26付記事「No regrets for Tom Dumoulin: ‘There was nothing I could do to beat Froome’」より)
Text:Tamaki Suzu
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