アシストがいない時、エースは何を選ぶか
状況は集団スプリントとはいきそうになかった。もはやどのチームもアシストを残しておらず、よくあるような
「発射台に運んでもらって最後の100~200mでエースが飛び出す」
というタイプのスプリントができる状況にはなかった。ならばどうするか。
ベネットが選んだのは、奇襲であった。
残り350m。スプリントを仕掛けるにはあまりにも早すぎると思われるタイミングで飛び出したベネットは、そのまま逃げていた2人を追い抜き、ライバルのスプリンターたちに影も踏ませぬまま、単独でゴールに飛び込んだ。
ここまで、エースを信頼し、集団分裂とアタッカーへの追走とで力を尽くし続けてくれたチームメートたち。彼らの努力に報いるべく、エースはその実力を見せつけたのである。エースとアシスト、その双方の思いが結実した勝利であった。
この勝利でベネットはヴィヴィアーニと並ぶ2勝目。「最強スプリンター」の証、「マリア・チクラミーノ」のポイントも22ポイント差にまで迫った。
熾烈を極める「スプリンター」同士の戦い
しかし翌日の第13ステージではヴィヴィアーニがリベンジを達成。2位に沈んだベネットは再び突き放されることとなった。
最終日ローマまで、残された集団スプリントの可能性があるステージは2つ。まだ逆転の余地はある。果たしてベネットは、「最強スプリンター」の称号を自らのものとすることができるか。