初心者でも楽しめる乗り味
そして、エートス最大の魅力はなんと言っても上り坂での性能だ。
今回試乗を行ったコースは丹沢周辺の、踏い続けないと進まないような上りや、勾配が10%を超える様な激坂であったが、フロントのギアを軽くし、テンポ良くペダルを回していくとまるでモーターが入っているのではないかと錯覚する様な力の後押しと突き上げをBB付近(クランクとフレームの接合部)から感じた。
フレームの剛性が程よく、レースバイク向きにありがちな脚力がある上級者でないと脚が疲れてしまうといった事は感じさせず、初心者の脚力でも十分にフレームの性能を楽しめる乗り味だ。
また、フレームの重心バランスが良く、ダンシング時(立ち漕ぎ)にはサドルがあるのを忘れるような軽さ。まさに、「自転車に乗っている感が無い」とはこの事だろう。
欠点をあげるとすれば、信号待ちなど停車時から漕ぎ出した瞬間の力の伝達具合が若干遅く感じたが、極端にストップ&ゴーの多い都内などを走らない限り、問題ではないだろう。
ライド中の信号待ちなんて、どのバイクでもストレスだ。
そんな欠点も、ペダルを数回転もすれば電動アシストのようにスイスイと自転車が進んでいく。
フィールドは無限大
さらに、エートスは”軽い”という事だけでなく、”楽しむ為のバイク”であるという事を忘れてはいけない。
試乗中にふと見えた林道。「グラベルもイケますよ!」と試乗前にスペシャライズドのスタッフに説明された事を思い出し、吸い込まれるようにグラベルへ。
今回試乗したテストバイクは25cの通常のタイヤであったため、グラベルでの下り坂のテストはしっかりとできなかったものの、適度な振動吸収性能と共にグラベルを楽しめるポテンシャルを備えていると感じた。(タイヤクリアランスは32cまで装着可能!)
「楽しむ」そして枠に囚われない「自由」がコンセプトのエートス。ライド中にふと現れた道への好奇心にも心ゆくまで応えてくれる、そんな一台だ。
”軽量”を謳うバイクにありがちな、軽量性と剛性が高過ぎて十分な脚力が無いとフラつく…と言った事も無い。軽量性は勿論、SL7とはまた違った剛性と乗り味であり、スペシャライズドが掲げるコンセプト通り、レースを楽しむよりかはライドを純粋に楽しむ事に向いているバイクだろう。