辿り着いた者だけが浴びれる「聖水」

「パリ〜ルーベ」の特徴。それは石畳とベロドローム…、だけではない。もう1つの名物、それは「シャワー」だ。

フィニッシュ地点のルーベ・ベロドロームに併設された建物の中には、小さなシャワールームがある。それも日本の銭湯を彷彿とさせるようなレトロな造りのものだ。

たいして特別な設備が整っている訳でもないシャワールームだが、1940年代にルーベ・ベロドロームがフィニッシュ地点とされてから、過酷なレースを完走した選手たちを癒してきた、まさに「オアシス」なのだ。しかも、「パリ〜ルーベ」が雨天時に開催されると、ダートな道が多いため、誰が誰だか分からなくなるほど選手達は泥で汚れてしまう。そんな汚れも疲れも全て洗い流してきたのが、このシャワールームなのだ。

さらにこのシャワールームが一種の名物になり、レース優勝者はその名前の書かれたパネルを、各シャワーを隔てる壁に取り付けることができる、という伝統も生まれた。過酷なレースを制した証として歴代の選手達とともに、殿堂入りされる場所となっているのだ。

しかし、近年ではより快適で設備の整ったチームバスの登場によって、伝統があるものの、この質素なシャワールームを使う選手は減ってきているそうだ。前大会である2019年の「パリ〜ルーベ」優勝者のフィリップ・ジルベール(グルパマFDG)もそんな「現代っ子」になるところだったと言う。

初の「パリ〜ルーベ」に出場し完走を果たした2007年、彼はチームメイトとともにチームバスへ向かった。しかし、2021年現在でも同チームディレクターを務めるフランスの重鎮、マルク・マディオがチームの選手全員にベロドロームのシャワーを浴びるよう命令したそうだ。ジルベールは、そのおかげで優勝した2019年に歴史を感じながら、その歴史の一部となれたことを深く実感できたと語っている。

たかがシャワー、されどシャワー。2021年の今大会もそんなエピソードが聞けることを期待したい。

本記事では、2021年10月3日に開催される「Paris〜Roubaix」について、その特徴を簡単にご紹介した。今後も、こんな「変(ユニーク)」な大会が生まれた理由や過去の名勝負などをご紹介していく予定だ。ぜひそちらもご覧いただき、2年ぶりの今大会を楽しんでほしい。

参照:VeloNews CyclingWeekly

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