フルームに勝てる男:トム・デュムラン(オランダ/チーム・サンウェブ)
Embed from Getty Images
2017年ジロ・デ・イタリアの総合優勝者。
彼の最大の特徴は、元々はクライマー(山を登る力が高いタイプの選手)としてではなく、個人タイムトライアルのスペシャリストとして注目されていた、という点である。
実際、2年前のリオ・オリンピックでは銀メダルを、そして昨年の世界選手権個人タイムトライアル種目では金メダルを獲得している(なお、フルームはいずれも銅メダル)。
既に述べたように、フルームの最強の要因は登坂力だけでなく、この個人タイムトライアル能力の高さにある。これまで、登坂力でフルームに喰らいついていた選手たちも、個人タイムトライアルで差をつけられて敗北している。
その点、デュムランはフルームを上回る個人タイムトライアル能力をもっており、あとは山で彼に喰らいつくことができれば十分に勝利ができる。
それがゆえにデュムランは、現在、最もフルームに勝つ可能性が高い選手であると言われているのである。
そんなデュムランが、今年、ついにフルームと本気の勝負を繰り広げることとなる。
過去にもフルームの出場したレースを共にしたことはあるが、フルームが先にリタイアしてしまったり、デュムラン自身が本気で総合優勝を狙わなかったりと、本気の激突、というのはこれまでなかった。今年は2人の「最強」が本気で激突する最初の機会であり、それだけで今年のジロは注目に値するものとなる。
チームの力がスカイに一歩及ばず
デュムランの不安点としては、所属するチーム・サンウェブのチーム力が、まだまだチーム・スカイと比べると低い点である。
時速40km以上の速度で走ることも多いロードレースでは風の影響を大きく受けるので、いかに集団の先頭をチームメートに引っ張ってもらうかが、勝利の大きな要因となる。
チーム・スカイはその点、優秀なチームメートたちが常にフルームを守ってくれるのだが、デュムランの場合は一人で戦わなければならない場面が多くなってしまう。
2017年のジロ第14ステージでも、最後の登りをデュムランがほぼ一人で前を引っ張り続けた。しかしデュムランの凄いところは、それでも黙々と前を引っ張り続けて、そして最後の競り合いでも勝ってしまうところである。単純な強さだけではない。その勝利への執念こそが、デュムランの強さの秘訣である。
昨年のジロ第14ステージで、強力なクライマーたちを突き放して勝利を掴んだデュムラン。今年、フルームに対して同じような走りを見せられるか。