ロードレース界をYoutube動画で変えた男、「オリカ・スコット(現ミッチェルトン・スコット)」のムービー・プロデューサー「ダン・ジョーンズ」が語るロードレースの未来とは?
関連記事:Youtubeで自転車ロードレース界を変えた男が語る、ロードレースの未来とは【前編】
*本記事は、許可をいただいた上で転載しております。
原文:「オリカの六年間を撮り続けた映像作家が語る、自転車ロードレースの未来」
チャベス、マシューズ、ヘイマンの3つの奇跡
オリカの一員として六年間で535本の動画を撮ってきた。中でも特に気に入っているのが「2016年のブエルタ第20ステージ」だという。チームの芸術的な”前待ち作戦”によりチャベスの総合順位を三位まで押し上げた、あの伝説的なステージである。
「このステージの動画には9,10個の異なるメッセージが含まれているんだ。」
「まず、頑固なボスだった監督ニールが”なぜか”このステージでは理知的な采配と、選手との円滑なコミュニケーションを見せた。」
「それに前待ちのキッカケを作ったハウソンや、総合五位という自らの順位を犠牲にしてチャベスを引いたサイモンをはじめ、9人の選手全員がレース前のプランを愚直に達成しようと懸命に走ったんだ。選手やスタッフの努力の成果が映っている、特に際立った動画なんだ。」
また、チームに三年ぶりのツール勝利をもたらした「マイケル・マシューズの勝利(2016年第10ステージ)」を始め、精神的な支柱であるベテランアシストのマシュー・ヘイマンによる伝説となっている歴史的な「パリ~ルーベ制覇」など、挙げればキリがないという。
【マイケル・マシューズの勝利】
【マシュー・ヘイマンのパリ〜ルーベ制覇】
「通常は3時間ほどで終わる編集が、興奮のあまり3倍の9時間もかかったんだ。」
自転車ロードレースの未来
10年以上に渡り自転車ロードレースをレンズ越しに見つめてきたジョーンズに、このスポーツの未来はどう映っているのだろうか。
「一つ確実に言えることは、もっと多くのチームや競技が ”動画コンテンツ” に力を注いでくるだろう。僕たちがはじめた頃は映像を撮っているチームは非常に少なかった。だが、普通に動画を撮って流すだけでは十分なメリット(視聴者数)を得られなくなっている。動画を短く・わかりやすく・刺激的にしないと誰も観てくれなくなってしまった。」
「また、iPhoneやiPadの進化によって”手軽さ”がキーワードになっていく。それが未来だ。」
「Velonの取り組み(Goproを使用したオンボード映像など)は、レースと視聴者の相互性を高めている。5年もすれば、視聴者は自分でバイクカメラやヘリ映像などを自由自在に切り替えて観戦できるようになるだろうね。」
「また、ここ最近の発展をみていると”ヘリ撮影がドローンに取って代わる未来”も遠くはないはずだ。」
「観客はとにかくスマホなどを使った手軽な観戦を求めている。リビングのソファに座ってテレビ観戦するなんて人はどんどん減っていくだろうね。」
All For One
『Backstage Pass』の終焉は、いちチームの広報コンテンツが終了した以上の意味を持つだろう。近年はツイッターやインスタグラムを使い、スタッフや選手自身による動画の投稿が当たり前になってきている。
もしかしたらチームが時間をかけて撮影・編集をするYoutube動画の役割は、終わったのかもしれない。だが、自転車ロードレースのチーム独自の映像配信の礎を築いたのは、ダン・ジョーンズが作り上げた『Backstage Pass』に他ならない。
そして、彼が撮り続けた5年間が一本の映画になった。
「レースが終わった後には記憶しか残らない。写真もいいし、記事だって悪くない。でも、映像にはその過去を呼び起こす力があるんだ。映像には、宝箱のようにワクワクさせてくれる力があるんだ。」
“Once the race is done, all you have is memories. Photos are good and stories are ok. But the fact that you can go back and watch some of these… it’s like a treasure chest”
—————————–
翻訳・参照
・RIDE Media
・Road Cycling UK
・Rouleur
・Euro Sport:Orica: That’s a wrap for ‘Backstage Pass’ producer Dan Jones
・Cycling Central:Tan Lines: Beyond the Backstage Pass
・Greenedgecycling: ‘Post Dan Life’
関連カテゴリ: