2018年のブエルタ・ア・エスパーニャへの参加チームが発表された。
発表されたチームのひとつ、EFエデュケーションファースト・ドラパック p/b キャノンデールの名前を見ると2017年ブエルタ・ア・エスパーニャのレース中に起こった騒動が頭を過ぎる。
そう、突然のスポンサー撤退からの復活劇だ。
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ロードレースチームのスポンサーが変わるのは何も珍しい話ではない。しかしスポンサー撤退から、SNS(LinkedIn)を通じての新しいスポンサーと出会い、そしてクラウドファウンディングによる資金集めという、時代を反映する方法での復活という点で非常に興味深いといえよう。
本記事では件の騒動と顛末を振り返りとして、スポンサー撤退を受けたチームのジェネラルマネージャー(GM)ジョナサン・ヴォーターズがチーム存続決定後に語った記事の翻訳を掲載、紹介している。
キャノンデール、スポンサー撤退の崖っぷちから復活までの真相
2017年のブエルタ・ア・エスパーニャ期間中のスポンサー撤退によるチーム解散騒動から、奇跡の復活をとげたスリップストリーム・スポーツ(キャノンデール・ドラパック)。その顛末についてチームのGMであるジョナサン・ヴォーターズへのインタビューを翻訳。
転載元:http://zatsukan.ltd/vaughterscrisis/
※本記事は許可をいただいた上で転載・掲載を行なっております。
※記事内は一部抜粋・再構成をして翻訳されています。抜粋記事はCyclingnewsより
リゴベルト・ウランを失っていたらチーム存続はなかった!
(インタビュアー)今日はキャノンデール・ドラパックGMのジョナサン・ヴォーターズが来てくれた。ようこそ。
ジョナサン・ヴォーターズ(以下JV):呼んでくれて、ありがとう。
8月1日に移籍市場が開いたわけだが、キミのチームは大きく変容を遂げた。まず来季はチーム名が新しく「EFエジュケーションファースト・ドラパック」になる。
JV:ああ。
#LongLiveArgyle. Here’s your first look at the 2018 Team EF Education First – Drapac p/b Cannondale kit created by @POCSports. #newkitday pic.twitter.com/6i9g2NIWKw
— EF Education First – Drapac p/b Cannondale (@Ride_Argyle) 2017年11月3日
ここ3、4ヶ月の動きについて聞きたいのだけど、激流に飲み込まれながらも最終的にはエキサイティング(良い結末)だった。そうだよね?
JV:ああ、想像以上に荒れ狂っていた。そして確かに「エキサイティング」だった。
あとチームの正式名称を言っておくと「EFエジュケーションファースト–ドラパック・パワードバイ・キャノンデール」だ。
#PinkArgyle has enjoyed a stellar season start. Your support has made every success sweeter. With bigger and better things still to come, we hope you’ll continue to enjoy the ride alongside us. #onthemove
📹: @EF
(Ps. Lots more videos to come this season – thanks EF!) pic.twitter.com/4NLjV6JelM
— EF Education First – Drapac p/b Cannondale (@Ride_Argyle) 2018年2月27日
ごめんごめん。もし僕たちが「EFエジュケーション」って書いたら修正依頼のメールが送られてくる?
JV:それに関してはノーコメントだ(笑)
メディアの話で言えば、今回の騒動に関する報道について、何度か本気で殺してやりたいと思った記者がいる(笑)
自転車ロードレースに関する「移籍報道」は他のスポーツより影響が大きいんだ。なぜなら「このチームはあの選手を失ったから出資を降りよう」「あのスポンサーはあの選手を支援しているから、我々はあの選手を狙おう」など、スポンサーやその候補の企業も移籍報道を参考に出資先を決めているんだ。
多くのスポーツにとって移籍はファンが喜ぶエンターテインメントだ。だから君たちメディアが面白おかしく物語を書く理由もわかる。その方が読まれるからね。
でも自転車ロードレースに関して言えば、その一つの記事がチームを消滅させる可能性を持っているんだ。例えば、2009年にウィギンス加入の噂がたったとき、僕らのスポンサーはとても喜んだ。結局スカイに行ったのだけどね。
その問題に関してはこちらがノーコメントとさせてもらうよ。キミは新スポンサー撤退の話を聞いて、全選手にチームの現状と契約解除のメールを送ったらしいが、あの時チーム解散という現実はどこまで迫っていたんだい?
チーム解散メールを送る直前だった
JV:状況の好転があと3、4日遅かったら「いままでサポートしてくれてありがとう。」というチーム解散のメールを関係者に送っていたと思う。
ツールの時のインタビューで君たちは「オース(Oath)」と新たなスポンサー契約を結んだと発表していた。それにウランと契約延長して…君たちは正しい道を歩んでいるように見えた。一体何が起こったんだ?
JV:いわゆる瀬戸際外交ってやつだよ。僕たちは運営に十分な額のスポンサーシップを新たなスポンサーと現行スポンサーから得られるはずだった。そして、その後とても魅力的なスポンサーをしてくれる企業が見つかった。しかし現実は…最後の部分を詰めきれなかった。あれは悪夢だったよ。
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リゴとの契約直後、存続の危機
「チームが存続が困難である」と報告したのは、リゴ(ウラン)と3年契約を結んだ8、9日後だった。通達後にリゴの「チームに新規スポンサー獲得する2週間の猶予を与える」という宣言がチームを救ったんだ。彼がそれをした理由は…わからない。あの行動に広報戦略の意図なんてなかっただろうし。彼自らで下した決断だと思う。とても寛容だよ、彼は。
(同じような運営危機に立たされた)他のチームがしているように、所属選手にそのことを知らせず、秘密裏にスポンサーを探すことだってできただろう?
JV:ああ。だがそれは事態を悪化させる可能性もあるギャンブルだったんだ。
リゴに連絡をすれば当然他のチームと接触するだろうし、ツール2位のエースがチームを離れる噂は、新規スポンサーを探す上で不利に働いただろう。リゴがチームを離れることはキャノンデール・ドラパックの死を意味するからね。
でも僕は彼に連絡したんだ。リゴのことが大好きだし、人として尊敬しているから。でも…難しい決断だった。
とにかく事実なのは、あの時リゴ(ウラン)を失っていたらチーム存続はなかったということだ。